異文化意識の発達をたどる「旅路の物語」──論文の公開間近です
- diffanddiv
- 4月29日
- 読了時間: 4分

異文化意識の発達がわかる「旅路の物語」を収録した論文を書きました
物語では、ビジネスパーソンのAさんが、どのように心を動かしながら違いと向き合っていったかが描かれています。5つのフェーズに加え、次の局面へと進むきっかけとなる「転換点」もわかるお話です。この記事ではその概要をお伝えします。ナラティブで、違いをめぐる成長のプロセスを直感的に理解することができます。
山本志都(in press)「異文化感受性発達モデルを活用した対人援助の可能性」家族療法研究 42 (2) (2025年5月下旬にジャーナルが公開されたら、「リサーチマップ」のページよりダウンロードが可能になります。刊行後にリンクを貼ります)
【異文化旅路の物語 概要リスト】
フェーズと転換点の流れ
無関心
外国籍メンバーの存在を認識しながらも、
「自分には関係ない」と捉え、遠くの風景のように違いを見過ごしていたAさん。
2. 転換点(初対面):違いが視界に飛び込む
会議の場で外国籍メンバーの率直な意見に直面し、
それまで意識してこなかった違いが、目の前に鮮明に現れる。
防衛
異なるやり方や主張に戸惑い、苛立ちを感じ、
「自分たちのやり方が否定されている」と受け止めて守りに入る。
外国籍メンバーの行動を「マナー違反」や「協調性の欠如」と捉え、
相手が間違っていると感じ、反発する心境に。
転換点(ご対面):個々の姿が見え,安心感を得る
外国籍メンバーのプライベートな悩みや趣味を知る中で、
彼らもまた努力し、葛藤しながら生活している個人であると実感。
違いに対する警戒心が少しずつ和らいでいく。
最小化
違いに触れても、「そういう考え方ややり方もある」と受けとめ、
異なる行動や意見を大目に見る寛容さを持つようになったAさん。
違いに対して構えずに、
「誰もが個人差の中でやっているだけ」と、まとめようとする。
あえて違いを掘り下げることはなく、表面的な理解と受容にとどまっていた。
転換点:「最小化」の限界
配慮しているつもりなのに、相手の違和感や不満が解消されない事案が出てきて、
悩むAさん。自己流の理解では埋まらない深いズレに直面していた。
異対面:重要な転換点
外国籍メンバーが語る日常体験や育った環境に耳を傾ける中で、
自分とはまったく異なる常識に、初めて現実味が感じられ、ハッとするAさん。
自身の見方や枠組みが揺さぶられる深い体験をする。
相対化
「正解は1つではない。」違いに出会ったとき、すぐに判断せず、
「どうしてそう考えるのか」「どんな経験があるのか」を尋ね、
相手の置かれた状況や大切にしている感覚を受けとめようとする対話が増えた。
相手の視点に立ち、相手が見ている世界を追体験するように想像を働かせる、
「エンパシー」(共感力)の力が育まれていった。
複数の視点を行き来して考える柔軟性も養われていった。
転換点:違いを映す「鏡」から「橋」へ
違いを「鏡」のように映し出し、自分との違いを観察して、
理解することができるようになった。
しかし、ただ違いを眺める「鏡」では足りない。
その違いを活かし、結びつけるための「橋」をかける必要があると感じ始める。
共創
違いを可視化する「鏡」で、メンバーの価値観と背景を可視化しながら、
強みを生かし合う「橋」をかける取り組みによって、
両方を活かす新しい仕組みを作り上げたAさんとチーム。
それでも、新たな方法には、新たな戸惑いや抵抗も生まれる。
だからこそ、橋をかけ続ける対話が必要だと確信する。
共創とは、対立を消すことではない。
異なる視点を尊重し、時に葛藤しながら、
まだ形づくられていない未来を共に描き続ける生きた旅だとAさんは語る。
資料はこちらから (5月下旬のジャーナル公開後にリンクを入れます)
この論文には、「DMIS(異文化感受性発達モデル)からDPIC(異文化意識開発®プロファイル)へ」の理論的変遷をまとめたパートも収録。DPICがどのように日本の文脈に合わせて発展していったかを、実証研究の流れとともに知ることができます。
異文化理解、多様性推進、対人支援、組織づくりに関心のあるすべての方へ。
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